京成線・半蔵門線の押上駅に程近い浅草通りに面して長養山春慶寺がある。
一見、商業ビルと見まがうような立派なビルディングなのだが、元和元年(1615年)創建の古刹だ。
「東海道四谷怪談」で有名な四世鶴屋南北の墓はこの寺にある。
南北の葬儀はその遺言に従って深川の黒船稲荷の自宅からこの寺まで、裃をつけた役者衆の長い葬列が続き、南北自身が生前にあらかじめ書いておいた「寂光門松後萬歳」(しでのかどまつごまんざい)の台本が配られたという。葬式まで自分でプロデュースするとは、さすが本朝を代表する大戯作者。粋というか、お茶目というべきか。

近頃は鬼平犯科帳の岸井左馬之助寄宿の寺ということでも有名らしい。
池波正太郎の『鬼平犯科帳』には鬼平の親友、岸井左馬之助の寄宿先としてこの寺がたびたび登場するということで、江守徹の筆になる「岸井左馬之助の寄宿の寺」の文字が彫られた碑が寺の入り口脇に建てられた。

(春慶寺:墨田区業平2-14-9)


