三囲神社に富田木歩(もっぽ)の句碑を訪ねた。
この神社には石碑が多く、有名な宝井其角の
夕立や田をみめぐりの神ならば
の句碑をはじめとして、大小さまざまな石碑がさして広くない境内に林立している。
そのなかに、
夢に見れば死もなつかしや冬木風
の句が刻まれた木歩の句碑があった。
台座を入れても高さは1メートル程しかないそれは、境内の片隅、銀杏の木の下につつましく佇んでいて、その控えめな感じが好ましく思えた。

また、ここから少し南に行った墨堤通りには、「富田木歩終焉の地」と書かれた碑が建っている。
大正12年(1923)9月1日、関東大震災によって引き起こされた火災によって、木歩は二十六歳の人生を終えた。
幼時から足の不自由だった木歩は、俳友の新井声風に背負われ、猛火の中を逃げまどっていたが、枕橋近くの隅田川畔まで来たところで、ついに逃げ場を失った。背後には猛火が迫り、目の前には隅田川という状況のなか、ついに二人は今生の別れを告げ、声風はは川に飛び込んだ……。
身体の障害、貧困、結核と度重なる試練を経てきた木歩の最期がこの壮絶で哀しい別れであったとは、神様はなんと不公平なのだろうかと思わずにいられない。
(三囲神社:墨田区向島2-5-17)



